事業が縮小化している昨今の日本で、今ブームとなっているのが「合同会社」と言う会社形態です。
実はこの「合同会社」、2006年に会社法の改正によって新しく設立できなくなった「有限会社」に代わるものとして誕生した会社形態です。
今回は、この「合同会社」の設立方法について詳しく解説していきたいと思います。
目次
「合同会社」とは?
今現在、日本で設立を認められている会社の形態は4つあります。
- 株式会社
- 合同会社
- 合資会社
- 合名会社
このうち、「合資会社」と「合名会社」は無限責任制となっており、万が一負債を抱えた場合に発起人が全額を抱えることとなります。
そのため設立するメリットが薄く、実際には新たに会社を設立する場合に選ばれるのは有限責任制の「株式会社」か「合同会社」となります。
「合同会社」は別名LLCとも呼ばれ、1977年に株式会社よりも小規模なビジネスに適した会社形態としてアメリカで生まれました。
ちなみに「LLC」とは、Limited Liability Companyの略で、直訳すると「有限責任会社」という意味になります。
「合同会社」と「株式会社」の違いって?
では「合同会社」と「株式会社」にはどのような違いがあるのでしょうか?
簡単にまとめると以下の4つの違いがあります。
- 設立費用が安い
- 定款の認証が不要
- 決済公告が不要
- 社長のことを代表社員と呼ぶ(株式会社は代表取締役)
「合同会社」を設立する際の流れ
さて、いざ「合同会社」を設立するとなった際、どのような流れで設立することになるのでしょうか。
簡単にまとめると全体的な流れは以下のようになります。
- 設立項目の決定
- 必要書類の準備
- 法務局へ必要書類の提出
では、各項目について1つずつ確認していきましょう。
設立項目の決定
「合同会社」を設立するためには色々決定しなければならないことがあります。
それぞれに詳しく見ていきましょう。
【会社名(商号)】
「会社名」、いわゆる「商号」と呼ばれるものですが、基本的には自分の好きな名前を自由に決めて決定することができます。
ただしいくつかのルールがあり、それに沿って名前を決定しなければなりません。
たとえば、使用できる文字。
漢字、ひらがな、ローマ字、アラビア数字、一部の符号などで、認められていない記号などを使用することはできません。
他にも、同じ住所に同じ会社名(商号)は付けてなならない、有名企業と同じ会社名を付けてはならない、名前の前後には「合同会社」と入れなければならない、などがあります。
【事業の目的】
事業の目的とは、会社が行う事業の内容のことです。
事業目的が1つだけの会社はあまりなく、多くの場合では複数の事業目的が書かれます。
というのも、会社法によって定款に記載されていない事業を行ってはいけないことが定められているためです。
定款の中の事業目的を後から変更したい場合、変更手続の申請と、それに伴う費用が発生します。
そのため、あらかじめ将来着手する予定の事業も含めて項目に入れておくことが望ましいです。
【本店の所在地】
本店の所在地とは、会社がある場所の住所です。
一般的に、住所を記入する際は「9-5-4」など、ハイフンで住所の省略をしたりしますが、定款に記載するときには省略は不可となっています。
必ず「9丁目5番地4号」というように正式な形式で記載しなければなりません。
【資本金の準備】
「合同会社」を設立するためには「資本金」も準備しなければなりません。
会社法の改正によって資本金は1円からでも会社を設立することができるようになりましたが、あまりに低い資本金はお勧めできません。
なぜなら資本金は、その会社が信用できるかの基準や会社の規模を表す指標として取引先や金融機関から重視されるポイントとなるからです。
業種によっては資本金の最低額が決められている業種もあります。
【代表社員の決定】
「株式会社」でいうところの「代表取締役」は「合同会社」の場合「代表社員」と呼ばれています。
「合同会社」の設立にはこの「代表社員」の決定も必須事項となっています。
「代表社員」は決定権を持つ人のことで、1名からでも設立できます。
【事業年度を決める】
決算月の決定をします。
「合同会社」は株式会社と同じように、事業年度を自由に定めることができます。
また、繁忙期を避けて決算月を設定することで、事務処理の負担軽減を図ることも可能になります。
必要書類の準備
「合同会社」を設立するためには、法務局での登記というものが必要になります。
ひとつずつ詳しく解説していきたいと思います。
【定款】
「定款」とは、会社の憲法、いわゆるルールブックのようなものです。
「合同会社」の定款は、株式会社のように株式の構成や譲渡制限などの難しい記載項目がないため、比較的簡単に作成することができます。
最近では電子化も進んでおり、「定款」をPDF化して電子定款として提出することも可能で、収入印紙代の4万円も不要となるため非常に便利です。
【印鑑届出書】
印鑑を会社の実印として使用するためには、「印鑑届出書」というものを法務局へ提出する必要があります。
実印さえあれば会社の設立は可能ですが、すべての業務を実印で行うというわけにもいきません。
一般的には普段使い用のものなどをセットで揃えることが多いです。
【社員全員の印鑑登録証明書】
「合同会社」においては、資本金の出資者のことを「社員」と呼びます。
この出資者全員の実印の「印鑑登録証明書」の提出が必要となります。
【払込証明書】
資本金を会社の口座へ払い込んだということを証明するものになります。
社員が全員で出資金を口座に振り込んだことがわかる書類で、一般的には「通帳のコピー」でOKです。
払い込み日は、定款が認証された日より後でなければなりません。
【合同会社設立登記申請書】
以上に書かれてあるすべての書類をまとめ、登記申請書を添えて法務局へ提出します。
法務省のサイトから申請用紙のダウンロードと、記載例を確認することができます。
いざ、法務局へ
たくさんの書類を用意したところで、法務局へ書類を提出する準備をしていきましょう。
上記で解説したすべての書類が揃ったら順番通りに書類を綴じていきます。
順番は決められているので、前後してはいけません。
上下もばらばらにならないように注意して綴じていきましょう。
以下の順番で書類を並べ、左端の上下にホチキスで留めてまとめていきます。
- 登記申請書
- 本店所在地決定書
- 代表社員の就任承諾書
- 代表社員の印鑑証明書
- 払込証明書
見開き部分には、会社の実印を押します。
この登記申請書類と、印鑑届出書、登記用紙と同じ書類を法務局の窓口へ提出することで登記の手続は完了となります。
お疲れさまでした。
さいごに
「合同会社」の設立について、ここまで詳しく解説してきましたが、いかがでしたか?
登記の申請はこれで終了ですが、実際には会社を設立した後にもやらなければならないことがいくつかあります。
会社設立後の作業に関しては、別記事で詳しく解説していますので、そちらも参考にしてみてください。