みなさんは「扶養控除」という言葉をご存知でしょうか?
社会人の方は一度は耳にしたことがある言葉だと思います。しかし、言葉はなんとなく知っていても実際にどのような制度かしっかり理解している方は少ないのではないでしょうか?
今回は、知っているのと知らないのとでは大違いな「所得税の扶養控除」について、詳しく解説していきたいと思います。
ちなみに、ややこしい言葉の意味については以下の内容で理解しておいてください。
・被保険者:家族を養っている者。今回は会社に勤務している人を想定。
・被扶養者:被保険者に養われている者。今回は専業主婦(主夫)、パート、アルバイトを想定。
目次
「所得税の扶養」とは?
では「所得税の扶養」とは一体どういったものなのか確認しておきましょう。
「所得税の扶養」とは、扶養している親族の人数に応じて所得の控除を受けることができる制度のことを指します。
ちなみに、同じ「扶養」という言葉を使っているため混同しやすいのですが、「所得税の扶養」と「社会保険の扶養」は、それぞれ使い方や意味が違ってきます。
「社会保険の扶養」とは、被保険者の扶養している親族が、自分自身で社会保険料を負担することなく保険の給付を受けられる制度のことを指します。
この「社会保険の扶養」の条件については別の記事にて詳しく解説していますので、そちらも合わせてご確認ください。
「所得税の扶養控除」の種類
「所得税の扶控除」には以下の3種類があります。
- 配偶者控除
- 配偶者特別控除
- 扶養控除
上記の3種類のうち、配偶者が対象となるのが「配偶者控除」と「配偶者特別控除」
配偶者以外の親族が対象となるのが「扶養控除」となります。
※「配偶者」には、内縁の夫、妻は含まれません。
この「扶養控除」の対象となるのは、6親等以内の親族と、3親等以内の婚姻によってできた親戚までと、かなり広い範囲が定められています。
例えば自分の兄弟、おじ、おば、4親等である祖父母の兄弟や、6親等であるいとこの孫、3親等の姻族である配偶者の兄弟の子どもまでも含めることができます。
「被扶養者」となるための条件は?
所得税の扶養親族になるためには、以下の条件に当てはまる対象者である必要があります。
- 16歳以上の親族または配偶者であること
- 納税者と同一の生計であること
- 年間の合計所得金額が基準値以下であること
- 青色申告者の専業従事者として、その年を通じて一度も給与の支払いを受けていないこと、または白色申告者の事業専従者ではないこと
それでは、ひとつずつ詳しく確認していきましょう。
16歳以上の親族または配偶者であること
扶養控除の対象年齢としては、以前は全年齢が対象でしたが、税制の改正により、現在では「16歳以上」が扶養の対象となっています。
所得税は毎年12月31日時点の状況をもとに計算されるため、扶養の対象となるのは対象年の12月31日時点で16歳を迎えている親族になります。
納税者と同一の生計であること
同一の生計であるということは、納税者と扶養されている者が同一の家計であることが必要となります。
要は元の財布が同じであるということです。
一般的には同居していて養われていることで同一の生計であることが認められますが、大学生など、子どもが別居している状態であっても、生活費、学費などの送金が確認できれば同一の生計であると申告することが可能です。
年間の合計の所得金額が基準値以下であること
合計の所得金額とは、収入から必要経費を引いた金額を指します。
金額については、親族の「扶養控除」と配偶者の「配偶者控除」「配偶者特別控除」で異なります。
詳細な金額については、この後の項目にて詳しく解説していきます。
確定申告に関する特定条件
確定申告において、青色申告者の専業従事者として、その年を通じて一度も給与の支払いを受けていないこと。
また、白色申告者の事業専従者ではないことも条件として定められています。
要は、自営業者の配偶者でないことという意味です。
自営業者の場合には、別途で所得控除の枠があるため、二重適用にならないよう、このような条件が設けられています。
被扶養者となるための収入要件
被扶養者となるための収入要件は先述しましたが、親族であるか配偶者であるかによって異なります。
これがよく耳にする「103万円の壁」と呼ばれる存在です。
この所得は、収入から必要経費が引かれた額となりますので一般的には交通費は含まれません。
ちなみに、もう一つよく聞く言葉として「130万円の壁」といわれるものがありますが、こちらは「社会保険の扶養加入」の際に使われます。
「その他の親族」の場合
合計所得金額が48万円以下(給与収入のみの場合は103万円以下)
「配偶者」の場合
- 配偶者控除 :合計所得金額が48万円以下(給与収入のみの場合は103万円以下)
- 配偶者特別控除:合計所得金額が48万円以上133万円以下(給与収入のみの場合は103万円以上201.6万円未満)
「扶養控除」によって控除される金額
扶養控除によって控除される金額についても、その他の親族の場合と配偶者によって異なってきます。
「その他の親族」の場合
配偶者以外の親族の場合は、年間所得が48万円以下(給与所得の場合103万円以下)であることに加え、青色申告の専従者として給与を受け取っておらず、また白色申告の専従者ではないことなどが条件となります。
令和元年(平成31年)まではこの年間所得は38万円以下(給与所得の場合103万円以下)でしたが、税制改正によって令和2年以降は条件が若干緩和されていますので注意が必要です。
ちなみに所得税の計算に関しては、扶養控除の金額は年齢によって以下のように分けられています。
- 19歳以上23歳未満:「特定扶養親族」
- 70歳以上 :「老齢扶養親族」
- それ以外の年齢の親族:「一般の控除対象扶養親族」
「配偶者」の場合
配偶者控除の場合は控除額は納税者の所得額によって異なります。
これは配偶者控除、配偶者特別控除ともに同じです。
所得額により、以下の3段階で控除額が分けられています。
- 900万円以下(給与所得のみの場合1,120万円以下)
- 900万円を超えて950万円以下(給与所得のみの場合1,110万円を超えて1,160万円以下)
- 950万円を超えて1,000万円以下(給与所得のみの場合1,160万円を超えて1,210万円以下)
さいごに
今回は「所得税控除の扶養」について解説してきましたが、いかがでしたか?
所得税の扶養対象になっても社会保険の扶養対象にならないこともままありますので、扶養に入りながら収入を得たい場合は収入基準などにも気を配らなければなりません。
扶養に入りたいがために働き方をセーブするよりは、思い切って自分自身が社会保険へ加入するくらいに働いてしまったほうが得をする場合もあります。
色々気を配らなければなりませんが、納得いく働き方ができれば良いですね。