美容師独立・開業マニュアルーよくあるトラブルの実例と注意点ー

美容師としてある程度の経験も積み、自分を指名してくれるお客様もつくようになってきた。
となると次なる目標は今の美容サロンからの独立、なんて考えている方も多いはず。


ですがいざ行動に起こそうと思うと、色々な課題や問題点にぶち当たります。
なんの揉め事もなく独立し、お客さまもついてきてくれればいいんですが、実際問題そうも行きません。

独立時に起こりがちなトラブルは意外に多く、最悪の場合損害賠償を請求されるケースなんかもあるため注意が必要です。


そこで今回は、美容師として独立する際によく見受けられるトラブルとその注意点について、実際にあったケースを例に色々とご紹介していきたいと思います。


勤めていた美容サロンから顧客情報の持ち出しを訴えられるケース

独立時のトラブルとして最も多いのが、今いるサロンでの指名客の扱いに関するトラブルでしょう。
独立の準備のためとは言え、今ついているお客様に独立先の宣伝、情報を伝える行為には細心の注意が必要です。


実際にあったケースとして、特に顧客情報のファイルなどを外部へ持ち出したわけではなく、口頭で独立することや、店舗の情報を伝えていたというだけで、オーナーから訴えられてしまったという事例もあるようです。

お客様との何気ない会話で独立のことを話した結果、それがサロンのオーナーの耳に入り、顧客情報の持ち出しにあたるとして訴えられたとのこと。


ちなみに結論としては違法ではないと判断されたものの、場合によっては損害賠償の対象となることもあるため、ポイントについて整理しておきましょう。

「不正競争防止法」違反になるかどうか

この場合の問題点としては、お客様に口頭で独立に関する情報を伝える行為が機密情報の不正な持ち出しにあたるかどうかです。


日本では「不正競争防止法」という法律があり、事業者間での公平な競争を保護するために、他社の商品を真似したり、他社の情報を不正に利用するなどの行為を禁止しています

不正競争防止法でいうところの機密情報としては「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上または営業上の情報であり、公然と知られていないもの」とされています。


例えば、従業員の中でも限定された人たちしかアクセスできず、パスコードなどで厳重な管理がされている帳簿などを活用して、DMなどでの宣伝活動を行っていた場合には不正競争防止法違反と判断される可能性は高いでしょう。


ですがこのケースで言えば自分の近況などを話しているに過ぎず、機密情報を外部に持ち出して営業活動などを行ったわけではありません

その会話の結果、今の美容サロンへ通い続けるか、独立先に来てくれるかはお客様が自分の意思で決めることです。


雇用時の規約違反にあたる可能性もある

「不正競争防止法」以外にも、サロンとの雇用契約の内容にも注意しておく必要があります。


大型の店舗やチェーン展開している美容サロンなどの場合、独立時にお客様に宣伝したり独立先の店舗を教えることを禁止する、などという誓約書を書かされている場合もあります。

その場合は規約違反にあたるため、店舗から損害賠償を請求されてしまう可能性は高いと言えます。


そういったことがないよう、基本的には事前にサロンのオーナーなどと話し合った上で、円満に独立するのがベストですね。

勤めていたサロンの売り上げが減ってしまい損害賠償を請求されてしまった

独立時に気を付けたいポイントとしてもう一点注意すべきなのが、所属していたサロンの売上への影響です。


勤務先のサロンで指名客を抱えている場合、独立時にある程度の売上額が落ちてしまうのは仕方ないことと言えます。
ですが、独立を志していた美容師が、美容サロンを辞める際にオーナーに黙って独立開業したという場合、少し話は変わってきます。
オーナーには何も言わず、以前勤めていた美容サロンの近くに店舗を構えて開業した結果、お客さまが流れてしまったために以前の美容サロンの売り上げが下がってしまい、オーナーより損害賠償請求をされてしまうケースです。



「職業選択の自由」と「営業の自由」

こういった場合にポイントとなってくるのが、日本には「職業選択の自由」という権利が保障されており、その中に「営業の自由」というものがあります。


営業の自由とは開業、維持、存続、廃業について、営業をすることの自由、現に営業をしている者が任意に営業活動を行い得る営業活動の自由があるという内容です。

ざっくり言えば、人はそれぞれ自分で選んだ職業を営むことができ、それに伴う営業活動を自由に行ってもよいとする権利です。


今回のケースの場合、開業の自由という観点からも開業場所はどこであっても法律上は問題ありません

以前働いていた美容サロンの近くに開業をした結果、お客様が流れてしまったとしても、それはあくまでも利用するお客様側の判断と言えるため、それが原因で売り上げが下がったからと言って訴えが通る可能性は低いです。


損害賠償の対象となるケースもある

営業の自由があるとは言え、損害賠償請求が完全に無効と言い切れないケースもあります。


いくら自由とは言っても、その営業行為が「社会通念上相当ではない行為」である場合には不法行為であると判断される可能性が高いです。

「社会通念上相当ではない行為」とはつまり、やり過ぎた行為ということです。


担当したお客様にサロンの悪い噂を流したり、無理やり自分のサロンを利用するようにお客様に強要したり、一般的、道徳的にやり過ぎた行為と判断された場合には、損賠賠償の対象になります。

自分の夢を叶えるためとはいえ、周囲に迷惑を掛けたり営業妨害に当たる行為は、当然ながら処罰の対象となりますので注意してくださいね。


さいごに

今回は美容師として独立する際に起こりがちなトラブルについて解説してきましたがいかがでしたか?


開業して間もない不安な時期に実際に訴えられてしまった場合、金銭的なリスクはもちろんのこと、心身への負担も計り知れません。

トラブルを避けるためにも店舗のオーナーや店長などと事前にしっかり話し合い、良好な関係を築いておきたいところです。

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