「キャリアアップ助成金」って何?条件や種類についてわかりやすく解説

事業者が利用できる補助金や助成金にはさまざまな種類があります。
主な補助金、助成金の種類は主に以下の7つになります。

  • キャリアアップ助成金
  • 創業補助金
  • 小規模事業者持続化補助金
  • ものづくり補助金
  • 事業継承補助金
  • 自治体による補助金、助成金
  • 政府系金融機関や公益財団による補助金、助成金

今回はその中でも、「キャリアアップ助成金」についてくわしく解説していきたいと思います。


「キャリアアップ助成金」とは?

「キャリアアップ助成金」とは、厚生労働省が実施している助成金のことです。


有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者といったいわゆる正社員ではない労働者に対し、企業内でのキャリアアップを促進するための取り組みを行った事業者に対して助成金を交付します。
有期雇用労働者などの能力、労働意欲を向上させ、優秀な人材の確保を目的としています。


「キャリアアップ助成金」のコース

「キャリアアップ助成金」は、通年申請を受け付けています。
毎年4月に内容の変更がなされ、適用の範囲が広がったり、コースが追加、変更されたりしています。


「キャリアアップ助成金」には2020年12月現在、以下の7つのコースがあります。


正社員化コース

有期雇用労働者などの正規雇用労働者、多様な正社員等への転向を行った場合に助成します。


賃金規定等改定コース

有期雇用労働者などの賃金の規定等を改定した場合に助成します。


健康診断制度コース

有期雇用労働者などに対し、労働安全衛生法上義務づけられている健康診断以外の一定の健康診断の制度を新たに制定、適用した場合に助成します。


賃金規定等共通化コース

有期雇用労働者などに関し、正規雇用労働者と共通の職務等に応じた賃金規定等を新たに制定し、適用した場合に助成します。


諸手当制度共通化コース

有期雇用労働者等に関し、正規雇用労働者と共通の諸手当に関する制度を新たに制定し、適用した場合に助成します。


選択的適用拡大導入時処遇改善コース

雇用する有期雇用労働者などについて、以下の項目を行い、当該措置により新たに被保険者とした事業主に対し、助成します。

  • 合意に基づいて社会保険の適用を拡大
  • 働き方の意向を適切に把握
  • 被用者保険の適用と働き方の見直しに反映させるための取組を実施


短時間労働者労働時間延長コース

雇用する有期雇用労働者などについて、週の所定労働時間を5時間以上延長、または週の所定労働時間を1時間以上5時間未満延長すること。
さらに基本給の増額を図り、新たに有期雇用労働者などを社会保険の被保険者に適用した事業主に対し助成します。


「キャリアアップ助成金」受給の条件

「キャリアアップ助成金」を受給するためには、まず中小企業の事業主であることが条件です。


資本金か、常時雇用している従業員の数で判定されています。
「常時雇用している労働者の数」とは、2ヶ月以上継続的に雇用されている従業員の数のことを指します。


また中小企業であること以外にも、以下の要件を満たす必要があります。
ちなみにこの要件は全コース共通のものとなっています。

  • 雇用保険適用事業所の事業主であること
  • 雇用保険適用事業所ごとにキャリアアップ管理者を置いている事業主であること
  • 雇用保険適用事業所ごとに対象の労働者に対してキャリアアップ計画を作成し、管轄の労働局庁の受給資格認定を受けた事業主であること
  • 対象の労働者に対する賃金支払いの状況を明確にする書類を整備していること
  • キャリアアップ計画の期間内に実際にキャリアアップに取り組んだ事業主であること

一番重要なところは雇用保険適用の事業者であるということです。
さらにはキャリアアップ管理者の設置、それに伴う計画実行の有無がポイントとなってきます。


「キャリアアップ助成金」の支給額は?

キャリアアップ助成金の支給額や上限額はそれぞれのコースにより異なります。
詳しい金額については各コースの記事にてご紹介しています。


「キャリアアップ助成金」が支給されるまでの流れ

「キャリアアップ助成金」が支給されるまでには、いくつかのステップを踏む必要があります。


転換規定がない場合、就業規則等の改定を行ってから就業規則等に基づき正規雇用へ転換したあと半年間、正規雇用の賃金を支払います。
正社員転換後、有期雇用時より5%以上の賃金の増加を行う必要があります。
そして半年後、労働局へ支給の申請をすると審査が行われ、助成金が支給されます。


ちなみに「正社員化コース」とそれ以外では若干流れが異なっており、「正社員コース」の場合は以下のような流れになります。

  1. キャリアアップ計画書の作成
  2. 労働局、ハローワークへキャリアアップ計画書を提出、許可をもらう
  3. 就業規則等の変更、従業員への周知
  4. 転換後、半年間の賃金を支払う(5%以上賃金の増加があること)
  5. キャリアアップ助成金の支給申請


「キャリアアップ助成金」を受給する上での注意点

各コースごとにさまざまな要件があり、少しずつ異なってはきますが特に以下の点には注意する必要があります。

  • 実地調査等への協力が必要となり、支給決定後に帳簿などの確認を求められる場合があります。
  • 提出する書類の差し替え、訂正はできません。
  • 申請の書類に疑問に思われる箇所、事柄の内容がはっきりしない箇所がある場合には該当する地区の労働局長が指定した期日までに書類の追加提出や修正を行わなければなりません。
  • 不正受給があった事業者は以後5年間、助成金の受給はできません。
  • 不正が発覚した場合には助成金を返還しなければなりません。(違約金として受給日の翌日から返還終了までの期間の延滞金および返還額の20%が課せられます)
  • 審査には時間がかかる場合があります。
  • 助成金の支給決定後、関係書類を5年間保管する必要があります。
  • 2つのコースの要件を満たしていたとしても、どちらか1つしか支給されないことがあります。

当然ですが、特に不正受給に関しての罰則は厳しく、延滞料金や違約金だけでなく、申請代理人にも助成金返還の責任が問われます。


さいごに

今回は「キャリアアップ助成金」についての概要を解説してきました。
申請のコースはたくさんあり、各コースについてはそれぞれ、詳しく別の記事にまとめてありますのでそちらで確認してみてください。

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