家族を社会保険の扶養に入れることができれば、社会保険料の負担が減って助かりますよね。
しかし、家族であれば無条件で誰でも社会保険の扶養へ入れることができるわけではありません。
社会保険の扶養に入れるためにはいくつかの条件がありますので、今回はその条件について詳しく解説していきたいと思います。
ちなみに、記事内の判別がややこしい言葉の意味については、以下の内容で理解しておいてください。
・被保険者:家族を養っている者。今回は会社に勤務している人を想定。
・被扶養者:被保険者に養われている者。今回は専業主婦(主夫)、パート、アルバイトを想定。
・保険者 :健康保険制度の契約主体のこと。健康保険制度においては、全国健康保険協会と健康保険組合が運営の主体。
目次
社会保険の「扶養」とは?
まず、社会保険の「扶養」とは何かから確認しておきましょう。
同じ「扶養」という言葉を使っているため混同しやすいのですが、「社会保険の扶養」と「所得税の扶養」は異なるものです。
「所得税の扶養」とは、扶養している親族の人数に応じて所得の控除を受けることができる制度のことを指します。
そして「社会保険の扶養」とは、被保険者の扶養している親族が、自分自身で社会保険料を負担することなく保険の給付を受けられる制度のことを指します。
この記事では、「社会保険に関する扶養」について詳しくまとめていきます。
「社会保険」の種類
「社会保険」には、以下の5種類があります。
- 健康保険
- 厚生年金保険
- 雇用保険
- 労災保険
- 介護保険
上記の5種類のうち、扶養の制度があるのは「健康保険」と「厚生年金保険」のみとなっています。
雇用保険と労災保険は働いている本人のみしか加入することができませんし、介護保険には扶養の制度がなく、自分自身で保険料を納める必要があります。
「被扶養者」となるための条件は?
日本には「国民皆保険制度」という制度があり、すべての国民は何らかの社会保険制度に加入することが義務づけられています。
社会保険へ加入することによって、毎月の保険料の支払いと引換えに、万一のときの生活が保障されるという仕組みになっています。
被扶養者は、自分自身で保険料を納付せずに被保険者の扶養へ入ることにより、社会保険に加入することができます。
被扶養者となるためには、以下の3つの条件が必要です。
- 被保険者の家族であること
- 生計維持関係にあること
- 同一世帯であること(一定の条件あり)
それでは。ひとつずつ詳しく確認していきましょう。
被保険者の家族であること
「被保険者の3親等以内の親族」が被扶養者としての家族と認められます。
例えば、自分から見て配偶者は自分と同じ位置にいるとして0親等としてみなされ、両親・子どもは1親等、祖父母・孫は2親等にあたります。
生計維持関係にあること
生計維持関係にあるかどうかは、被保険者と被扶養者の収入で判断されます。
以下の2つが当てはまっていることが条件になります。
- 被扶養者の年間収入が130万円未満である
- 年間収入が被保険者の収入の1/2未満である
上記2つを満たせば生計維持関係にあるとみなされます。いわゆる「130万円の壁」がこれに当たります。
同一世帯であること(一定の条件あり)
「住居と家計が共同」であるかが判別のポイントとなります。
このときの「共同」とは、戸籍や世帯主であることなどは関係なく、実際に住居と家計が同じであるか否かで判断されます。
例えば、単身赴任などで住居が別々であっても、家計が同じであれば同一世帯と認められます。
一方、二世帯住宅のように住所が同じところであっても、収支が別々であれば家計が異なるため、同一世帯と認められません。
こちらには一定の条件があり、同一世帯であることが求められる家族とそうでない家族がいます。
同一世帯である必要がない家族
直系尊属
配偶者
子、孫、兄弟姉妹
同一世帯である必要がある家族
上記以外の3親等内の親族
内縁関係の配偶者の父母や子
内縁関係の配偶者の死亡後における父母や子
しかし、上記に当てはまっていても75歳以上の後期高齢者医療制度等に加入している親族は、既に保険制度へ加入しているとみなされるため、被扶養者になることはできません。
被扶養者となるための収入要件
被扶養者となるための条件で無視できないのは「年間収入」です。
社会保険において、今後1年間に見込まれる収入のことを年間収入と呼びます。
被扶養者の必須要件として年間収入が130万円未満であることが条件となっています。
これは月額換算すると108,334円となりますので、きちんと把握しておくことが大切です。
「年間収入」にはどこまで含まれるのか?
「直近の3ヶ月分」が収入のベースとして年間収入として判断されるので、実際には年収が130万円を超えていなくても、直近の3ヶ月分の収入が高ければ130万円を超えてしまう場合があります。
例えば4月から扶養に入りたい場合、1~3月の収入の平均額を12倍した金額が130万円を超えてしまうと扶養には入れません。
また、収入には交通費、雇用保険の失業給付や健康保険の傷病手当金、出産手当金も含まれますので注意しましょう。
「年間収入」が130万円以上であっても被扶養者に該当する場合
一方、年間収入が130万円以上であっても、以下の条件にあてはまれば被扶養者に該当します。
- 60歳以上の者
- 障害厚生年金の受給要件に該当する程度の障がい者の者
令和2年(2020年)以降の扶養条件
令和2年からは扶養の要件に「国内に居住していること」が追加となります。
つまりは、日本国内に住んでいなければならないということです。
外国人労働者の受入れに対応したことが原因となっているようです。
ただし、短期間の出張や留学などについては例外的に免除されますので注意が必要です。
社会保険の被扶養者加入の手続方法
家族を社会保険の被扶養者とするためには、「被扶養者(異動)届」を提出する必要があります。
この届けを保険者へ提出し、認定されると晴れて被扶養者となることができます。
手続に関しては被保険者が雇用されている会社で行います。
従来は被保険者が申し立てを行えば認定されましたが、2018年10月から健康保険の被扶養者の認定の手続が厳格化されました。
それに伴い、現在では続柄確認と収入確認をするための書類添付が必須となっています。
- 続柄確認のために必要な書類:戸籍謄本、戸籍抄本あるいは住民票など
- 収入確認のために必要な書類としては課税証明書など
被扶養者が別居しており、仕送りや送金を行っている場合であれば、仕送り額が明記されている通帳等のコピー、現金書留のコピー、証明書類などが必要となります。