資本金の「減資」とは?メリットやデメリットを分かりやすく解説

「減資」という言葉ってあまり聞きなれないですよね。

言葉の意味的には「減資」と聞くと、業績が悪く、会社の規模を縮小するような消極的なイメージを持たれるかもしれません。

ですが実際は税制上のメリットがあったり、赤字の補填のために行われることが少なくありません。

今回は、「減資」のメリットやデメリットについて詳しく解説していきたいと思います。


「減資」とは?

「減資」とは、「資本金を減らす手続」のことを言います。
具体的な内容としては以下の2種類があります。

  • 「無償減資」
  • 「有償減資」

以下、ひとつずつ解説していきましょう。


「無償減資」

「無償減資」とは、実際にはお金の動きのない「減資」のことを指し、貸借対照表上、資本の総額も同じで変わりありません。

処理としては、過去の赤字部分である繰越欠損金を資本金と相殺するだけなので、財務内容には影響しません。

この「無償減資」の目的としては繰越欠損金という赤字がなくなることで、決算書の見た目を良くすることなどが挙げられます。

決算書の見た目を良くしておくことで金融機関からの融資も受けやすくなります。

また節税を目的とした「無償減資」を行う場合もあります。

資本金を資本準備金に振替える処理を行うことで、資本金を少なくすることにより税金が優遇されるケースが多くなります。

このように、「無償減資」は会社の経営が立ち行かないために行うわけではなく、会社にメリットが多いため多くの会社で利用されています。


「有償減資」

「無償減資」がお金の動きがない減資であるのに対し、「有償減資」とはお金が出て行く減資のことを指します。

例えば株主から出資を得るために、株主に対し配当を支払う必要がありますが、配当は資本金から出すことはできません。

そのため、利益が出ていない場合に株主に満足な配当を支払うときには、自己資本を取崩すしかなくなってしまいます。

そういった場合にこの「有償減資」を行って資本金を準備金へと振替えます。

準備金であれば、そこから株主へ配当を支払うことができますので、その準備金を使って株主へ配当を行う、といった用途で利用される減資の方法です。

しかし配当分の金額は会社から出て行ってしまいますので、純粋に資産が減ってしまう点には注意が必要です。


「減資」を行うメリット

先の項目でも軽く記載しましたが、資本金を「減資」することによるメリットについて、改めてまとめておきましょう。

目的としては主に以下の3つが挙げられます。

  • 配当の支払いが可能
  • 繰越欠損金の解消
  • 税制上の利点

それぞれについて詳しく確認していきましょう。


「配当」の支払いが可能

上記の「有償減資」の項目でも解説しましたが、株主への「配当」は利益から行う必要があり、資本金から出すことはできません。

そこで資本金を一度取崩して余剰金、準備金へ振替えることにより、資本金から配当が行えるようになります。


「繰越欠損金」の解消

過去に発生した赤字は、「繰越欠損金」として貸借対照表へ蓄積されていきます。

この繰越欠損金が大きいと、あまり見映えが良くないため、金融機関からの融資や投資家からの出資を受けづらくなる可能性が高まります。

そこで、上記で解説した「無償減資」を行い、資本金を取崩し、繰越欠損金を解消することがあります。

例えば資本金5,000万円の会社の繰越欠損金が1,000万円だった場合、1,000万円の無償減資を行うことにより繰越欠損金はなくなり、資本金が4,000万円となります。

実際にお金の動きはなく、自己資本総額も変わりませんが、決算書からは繰越欠損金の表記がなくなるため、財務諸表上の見栄えが改善されます。


税制上での利点がある

「減資」を行うことにより、税金関連での利点が得られる場合があります。

税制上、資本金が1億円以下の法人には様々なメリットがあります。

そのため、資本金が1億円以上ある会社が「減資」を行い、資本金を1億円以下になるように減らすことがあります。

また、法人住民税の均等割の金額も資本金等の金額により変わってきます。

資本金が1,000万円を超えると均等割の金額が大きくなることから、法人住民税を節約するために「減資」を行う場合もあります。


「減資」を行うデメリット

減資を行う際のデメリットについてもきちんと知っておくべきでしょう。
こちらも「無償減資」と「有償減資」では少し異なってきます。


「無償減資」のデメリット

「無償減資」のデメリットとしては、「信用度が低下する危険性がある」という点です。

実際にお金の動きはないので自己資金の金額は変わらず、現金も流出するわけではないので、会社の経営に大きな変化があるわけではありません。

ですが、大企業ではない中小企業や、未上場の企業を投資家や金融機関が評価する際、資本金の金額で判断されることも多くあります。

「無償減資」を行ったことにより、資本金が少なくなると「資本金が少ない安全性の低い会社である」というネガティブなイメージになり、融資や投資が行われにくくなる可能性もあるため注意が必要です。


「有償減資」のデメリット

「有償減資」の場合は、実際にお金の動きがあり、会社から現金の流出が起こります。
そのため、経営の資金繰りが悪化し、安全性が低下する可能性があります。

さらには利益の分配でないため、「有償減資」により株主へ配当を支払った場合には「みなし配当」という扱いになり、課税対象となってしまいます。

みなし配当の税額は、下記のような計算式で計算されます。

  • 交付された金銭等の額-資本金等の額(資本金+資本余剰金)

この計算式で算出されたみなし配当に、源泉所得税率を乗じた金額を配当から源泉徴収しなければならなくなります。


さいごに

今回は「減資」とは何なのか、「減資」を行うメリットやデメリットについて解説してきましたが、いかがでしたか?

別の記事にて「減資」の手続方法や会計上の仕訳についても詳しく解説していきたいと思いますので、ぜひそちらも合わせてご確認ください。

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