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商号の決め方-類似商号と商標権

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類似商号規制は廃止された

2006年5月の会社法施行に伴い、これまで会社の名称を決める際に大きな足枷となっていた「類似商号の登記禁止規制」が撤廃されました。

旧商法下では、「同一の市町村内で、同一の営業目的で、他の会社と同一もしくは類似する商号」を登記することは認められず、大阪市・神戸市のような、いわゆる政令指定都市では、同一「区」内で同じ商号を用いることすら許されませんでした。

こうした規制の下では、希望する商号を決めたら、法務局で類似の商号が既に登記されていないことを確認し、類似の商号が既に登記されていた場合は、別の商号に変更するか、他の市町村で改めて登記する他ありません。

商号調査には、かなりの時間と労力を要するため、会社の設立手続の中でもとりわけハードルの高い項目のひとつでした。

そうした不合理な規制が撤廃されたことにより、会社法施行後は時代のニーズに即応したスピーディな会社設立が可能になったことは、新規ビジネスを立ち上げる上で大きな前進であったことは間違いありません。

それでは商号調査は不要なのか?

類似商号調査は基本的には不要となりましたが、希望する商号の使用が無制限に認められるようになったのかといえば、そういうわけでははありません。

まず、新会社法の下でも、同一商号・同一住所の会社は、事業内容の如何にかかわらず、登記は不可能です。

なぜなら、同一住所に同一商号の会社が複数存在してしまうと、会社を特定するのが難しくなってしまうためです。

もっとも、この点については、法務局の専用端末はもちろん、「登記・供託オンライン申請システム」を利用することで、インターネットによる検索も可能となっているため、旧商法下の商号調査とは比較にならない簡便さと言えるでしょう。

問題は、同一商号・同一住所のような分かりやすいNGパターンの他、グレーゾーンに属する判断の難しいケースも存在するため、後者についてはさらなる注意が必要です。

不正競争防止法と商標権の問題

判断の分かれるグレーゾーンに属するテーマとして、不正競争防止法にかかわる問題があります。

類似商号の規制そのものは撤廃されたというものの、「不正の目的を持って他の会社であると誤認させるおそれのある名称又は商号の使用」は認められません。

とりわけ、有名企業の名称や、それに似た名前を使用することは避けた方が賢明といえます。

不正競争防止法では、「故意又は過失により不正競争を行って他人の営業上の利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる」と定めています。

同法に抵触すると判断されれば、商号使用の差止請求は言うまでもありませんが、最悪の場合は損害賠償請求によって大きな社会的・金銭的ダメージを蒙ることも覚悟しなければなりません。

また、商号に加えて、意匠権の問題についても注意を払う必要があります。

商標権とは、事業者が取扱う製品やサービスを、他人のものと区別するためにつけられる名前、マーク等を独占的に使用する権利を指します。

商標権侵害についても、不正競争防止法と同じく損害賠償請求を受けるリスクが存在し、いざ敗訴となれば、高額の賠償金を課されるケースが少なくありません。

使用できる文字とできない文字

平成14年の商業登記規則等の改正を機に、それまで認められなかったローマ字を会社名に使用することができるようになりました。

ただし、認められたのは“ローマ字”表記であって、○○○Co.,Ltd.のような“英語”表記は現在も使用することができませんのでご注意ください。

ともあれ、これ以降は、従来の「ひらがな」「カタカナ」「漢字」に加えて、「ローマ字」を会社名に用いることができるようになったわけですが、同時に「アラビア数字」「その他の符号」も使用可能となりました。

ちなみに、「その他の符号」とは、「&」(アンバサンド)、「’」(アポストロフィー)
、「,」(コンマ)、「-」(ハイフン)、「.」(ピリオド)、「・」(中点)、の6種類を指し、上記以外のたとえば「!」や「%」「☆」といった記号は使用することができません。

さらに、6種類の符号についても、字句(日本文字を含む)を区切る際の符号として使用する場合に限り用いることができると規定されているため、名称の先頭又は末尾に用いることはできません。

ただし、「.」(ピリオド)については、その直前にローマ字を用いた場合に省略を表すものとして商号の末尾に用いることができるという特例があるのですが、文末のピリオドは見落とされやすく、銀行振込時に「ピリオドのある・なし」で手続が滞る可能性も考えられることから、避けた方が無難であることは確かです。

なお、「!」や「%」の他、日本語の句読点(「、」や「。」)も使用できませんので、現行法の下では、「株式会社 モーニング娘。」や「藤岡弘、株式会社」といった商号の会社設立は不可ということになります。

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この記事を書いた人

大槻 直志のアバター 大槻 直志 税理士

オーティス税理士事務所の代表税理士。専門分野は法人税、所得税、消費税。

スタートアップから年商数十億規模の会社まで幅広く顧問先を担当。
過去報告だけでなく、将来予測ベースでの経営の見える化を支援しています。

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