独立し、会社設立を思い立ち、複雑で準備の大変な書類も全て揃え、無事に登記も完了。
お疲れさまでした…と一息つきたくなる気持ちもわかりますが、むしろここからが本番と言っても過言ではありません。
会社設立後にこそ必要な手続がたくさんあります。
提出期限が短いものも多いので、登記が完了するまでにこちらも並行して準備をしておきましょう。
会社設立後に必要な手続は?
具体的に「会社設立後に必要な手続」としては以下の4つです。
- 法人口座の開設(金融機関)
- 税務関係についての届出(税務署)
- 地方税についての届出(地方自治体)
- 社会保険についての届出(年金事務所等)
これらの項目について、ひとつずつ詳しく見ていきましょう。
法人名義の口座の開設
会社設立後に即座に実行しなければならないのが法人名義の口座開設です。
年金事務所への提出書類の添付物の中に「口座振替依頼書」があり、提出期限が会社設立後5日以内と定められているため、特に注意が必要です。
口座の開設には登記簿謄本や印鑑証明が必要となるため、会社設立の後にしかできません。
登記が完了した日の帰りに銀行へ行って口座を開設するくらいの意識を持っておくのがベストでしょう。
口座の開設に必要なものは、以下の通りです。
- 「登記簿謄本(履歴事項全部証明書)」
- 「印鑑証明書」
- 「印鑑(会社の実印)」
- 「公的な本人確認書類、委任状」 ※窓口申請者が代表者でない場合
なお、法人口座の開設には審査があり、開設までに時間がかかることがある点にも注意しておきましょう。
必要な書類を各機関へ提出する
無事口座を開設したら、必要書類を各機関に提出します。
必要な書類は各機関の窓口などで相談の上、漏れのないように揃えましょう。
また、業種によって必要な書類が変わってきます。
「登記簿謄本(履歴事項全部証明書)」が添付資料として必要なことが多いので、あらかじめ多めに準備しておくとよいでしょう。
必要に応じて行政機関による「許可」「登録」「免許」が必要になるケースもあります。
会社設立時に許可、登録、免許が必要な業種の例としては以下の通りです。
「許可制」
行政機関が公共の秩序を考え、一般的に法律で禁止されている行為について「許可」することで初めて業務を開始できる業種があります。
「飲食業」や「旅館業」などを開業する場合には、この「許可」が必要となります。
「登録制」
行政機関に「登録」することにより、その行為が認められる業種もあります。
「旅行業」などがそれにあたります。
「免許制」
一般的に法律で禁止されている行為を一定の「免許」や「資格条件」を備えることにより解除すること。
「宅地建物取引業」や「酒類販売業」などの業務がこれにあたります。
管轄する税務署への届出
次に国税関係の書類の提出先について見ていきましょう。
すべての届出書式は国税庁のサイトでダウンロードすることができます。
法人設立届出書
新しく会社が設立したことを届け出るためのもの。
提出期限:会社設立から2ヶ月以内
添付書類:登記簿謄本や定款など
青色申告の承認申請書
法人税の青色申告の承認を得るための届出。
提出期限:設立の日以後3ヶ月を経過した日と設立第1期の事業年度終了の日とのうちいずれか早い日の前日まで
給与支払事務所等の開設届出書
会社が役員報酬・給与を支払う際の届出書。
個人事業主と違って従業員がいなくても提出しなければいけませんが、従業員が0で代表社員の給料もない場合は必須ではありません。
提出期限:給与等の支払いをする事務所開設から1ヶ月以内
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
従業員の人数が常時10人未満の場合に、毎月納付の源泉所得税を半年に1回に
省略できるようにするための書類です。
事務作業を大幅にカットできるため、「給与支払事務所等の開設届出書」と一緒に提出しておくことをお勧めします。
提出期限:なし(申請の翌々月の納付分から適用が可能)
棚卸資産の評価方法の届出書
一般的に法人税については、法定評価方法が定められているため、その方法に基づいて申告を行います。
しかし、商品や製品などの在庫をもつ業種で法定評価方法が実情に合わない場合があり、その場合に提出が必要となる書類です。
提出期限:設立第1期の確定申告書の提出期限と同じ
減価償却資産の償却方法の届出書
「棚卸資産の評価方法の届出書」と同種の書類です。
法人税の法定償却方法は資産の種類毎に定められていますが、実際の固定資産の減価償却が法定償却方法に合っていない場合に届け出る必要があります。
提出期限:設立第1期の確定申告書の提出期限と同じ
廃業届
「個人事業主」が会社を設立し、個人事業を廃業した場合に提出する書類。
提出期限:個人事業を廃業した日から1ヶ月以内
各都道府県、市町村への届出
各都道府県、市町村へも税務署へ提出したものと、ほぼ同様の書類提出が必要です。
おおまかに言うと、以下のようなイメージです。
- 税務署へ提出・・・国税に関するもの
- 都道府県、市区町村へ提出・・・住民税や事業税などの地方税に関するもの
地方税に関する届出は、各都道府県ごとに条例などが異なり、それに基づいて決められているため書式が変わってきます。
代表社員の住所地ではなく、会社所在地を管轄する各官庁に届出を行うという点に注意が必要です。
「社会保険」への加入
忘れてはならないのが「社会保険」への加入です。
従業員が1人でもいる場合、社会保険への加入は義務付けられており、これを怠れば信用問題にも関わる上、違法となります。
厚生年金・健康保険
「厚生年金」と「健康保険」に関して提出するものとしては、以下のものがあります。
「新規適用届」
厚生年金や健康保険に加入するための届出書のことです。
提出期限:会社設立から5日以内
「被保険者資格取得届」「健康保険被扶養者(異動)届」
従業員を雇用したとき、従業員に扶養関係が生じたときに届け出が必要な書類です。
労災保険
「労災保険」と雇用保険を合わせて「労働保険」と呼び、従業員を雇用する際には、労働保険への加入が必要不可欠となってきます。
「労災保険」の加入時には、以下の届出書を所轄の労働基準監督署へ提出します。
労働保険関係設立届
従業員を雇用した際、労災保険へ加入するための届出書のこと。
提出期限:労働者を雇用した日から10日以内
労働保険概算保険料申請書
労働保険料を申告、納付するための届出書のこと。
提出期限:労働者を雇用した日から50日以内
雇用保険
労災保険と共に労働保険のうちのひとつが雇用保険になります。
ハローワークの窓口で雇用保険の手続は行うものの、届出先は労働基準監督署となっていますので注意が必要です。
届出の書類は以下のものになります。
雇用保険適用事業所設置届
雇用保険に加入するための届出書のこと。
31日以上継続して雇用する見込があり、1週間に労働時間が20時間以上になる従業員を雇用した場合に提出が必要となります。
提出期限:雇用した日から10日以内
雇用保険被保険者資格取得届
雇用保険に加入するための届出書のことで、添付書類に雇用契約書の写しが必要となりますので注意してください。
提出期限:被保険者となった月の翌月10日までに届出
さいごに
いかがでしたか?今回は会社設立後に必要な手続について解説してきました。
会社が設立でき、一安心…と思いきやその後もやらなければならないことが意外と多くて大変ですよね。
気を抜かずにきちんと手続を済ませて、トラブルのないように注意してください。