「合同会社」を設立する際には様々な書類の作成、提出が必要となります。
その中でも、必ず作成しなければならない書類の中に「定款」というものがあります。
この「定款」は、合同会社の設立時に作成しなければならないものの中でも特に重要な位置づけにあるのですが、非常に難易度が高く、定款の作成にかなり期間を要する方も多く見受けられます。
そこで今回は、合同会社を設立する際に必要になる「定款」の作成方法について、必ず守らなければならないこと、注意すべきことなど詳しく解説していきたいと思います。
目次
「定款」ってなに?
「定款」とは、簡単に言ってしまえば会社のルールブック、憲法のようなものです。
会社の規則や運営に当たっての決め事を記載しているもので、会社設立の際には必ず作成しなければならないものとなっています。
事業を運営していくにあたり、定款の内容は更新されていきます。会社設立の際に最初に作った定款は「原始定款」と呼ばれます。
対して、現在効力のある定款のことを「現行定款」と呼びます。
合同会社でも定款の作成は必要?
会社法においては株式会社、合同会社など、会社の形態に関係なく、会社を設立する際には、必ず定款の作成が必要となっています。
ただし、合同会社の場合は株式会社とは異なり、株主の構成、機関の設計、株式の譲渡制限等の複雑な事項の記載義務がないので、比較的容易に定款の作成が可能になっています。
また、法務局での公証人による認証も不要となります。
定款に記載すべき3種類の必要事項
定款には定められたルールがあり、それに沿った作成方法でなければ認められません。
定款は、「絶対的記載事項」、「相対的記載事項」、「任意的記載事項」という3つの構成により成り立っています。
この3つが記載されていなければ定款としては認められませんので、一緒に確認していきましょう。
「絶対的記載事項」について
「絶対的記載事項」とは、文字通り、定款に必ず記載されていなくてはならない事項になります。
万一、絶対的記載事項に記載漏れや不備があった場合には、定款は容赦なく無効となってしまいますので注意が必要です。
絶対的記載事項は会社法27条で定められており、最低でも以下の6項目の記載が必要となっています。
- 会社の商号
- 事業の目的
- 会社の本店の住所
- 社員(出資者、発起人ともいう)の氏名、住所
- 社員の責任について
- 社員の出資目的と価額
合同会社においては、上記の6項目が記載されていれば定款として認められます。
上記の6項目について詳しく見ていきたいと思います。
【会社の商号】
会社名になります。社名はある程度自由に決めることができますが、いくつかのルールがあります。
- 必ず前か後ろに「合同会社」と入れる必要がある。
- 使用できる文字に制限がある。
- 公序良俗に反する文字は使用不可。
- 大手企業と同名など、紛らわしい名前はつけられない。
- 業種によって入れなければならない文字がある。
- その業種でなければ入れてはいけない文字もある。(「銀行」「保険」など)
【事業の目的】
会社がどういった内容の事業を行うかを記載します。
会社は定款に記載されている事業以外は行うことができないため、将来手がける可能性のある事業は、あらかじめ全て記載しておくのが良いでしょう。
【会社の本店の住所】
会社の所在地を記載します。
本店の所在地の記載方法については「最小行政区画まで」と、「番地まで」の2通りが認められています。
例えば住所が「大阪府高槻市芥川町1-1」であった場合、
- 最小行政区画まで → 大阪府高槻市芥川町
- 番地まで → 大阪府高槻市芥川町1丁目1号
となります。
最小行政区画までの記載としておけば、後に事業所を移転した際、同一区画内の異動であれば定款の住所変更をしなくてもよくなりますので、手間とコストが省けます。
【社員の氏名、住所】
社員の氏名、住所を記載します。
住所は、住民票に記載されている住所を正確に記載する必要があります。
社員が複数名いる場合、全員の氏名と住所の記載が必要です。
【社員の責任について】
合同会社においては、すべての社員が有限責任社員であることが定められています。
この点は、定款に記載しておくことが法律上定められています。
ここで言う「社員」とは、雇用関係のある従業員のことではなく、会社設立に際し資本金を出資した出資者のことを指し、株式会社でいうところの株主に相当する地位にあります。
有限責任社員とは、万が一会社の運営がうまくいかず負債を抱えてしまった場合に、その全てを債権者から請求されることはなく、出資金の範囲内での責任に留められている社員のことを指します。
【社員の出資目的と価額】
最低資本金制度が廃止され、資本金の最低額がなくなったことにより、資本金が1円からでも会社の設立ができるようになりました。
一般的には資本金は現金を振込むものですが、事務機器や商品の在庫など、現物で出資する「現物出資」を行うことも可能です。
「相対的記載事項」について
相対的記載事項とは、絶対的記載事項とは異なり記載は必須ではありません。
しかしながら、記載がない場合は法的に効力を生じませんので、社員全員で決定した事項などは、定款のこの部分に記載しておかなければ決定した意味を成さなくなってしまいます。
相対的記載事項に記載すべき事項には以下のものが挙げられます。
- 業務執行社員の定め
- 代表社員の定め
- 社員の加入に関すること
- 社員の退社に関すること
- 利益の配当に関すること
- 会社の存続期間に関すること
- 解散事由について
上記に挙げた項目が相対的記載事項で、一般的に多く見られる事項になります。
相対的記載事項は、合同会社の運営を円滑に行うための決まりごとを記載しておく趣旨ですので、上記に挙げた事項以外であっても記載することができます。
「任意的記載事項」について
任意的記載事項とは、相対的記載事項と同じく、定めていても定めていなくてもどちらでもよい事項となります。
任意的記載事項については、社員の間で決定した場合であっても、定款に書いても書かなくても自由に決められます。
逆に記載する場合は、法律や公序良俗に反しない範囲内の事柄であれば自由に内容を決めることができます。
自分の会社のルールを定款に記載しておくことにより、スムーズな会社の運営ができるというわけです。
任意的記載事項に記載すべき事項には、以下のものが挙げられます。
- 事業年度(決算の時期)
- 公告の方法に関すること
- 役員の報酬についての定め
- 利益配当についての定め
任意的記載事項はその名の通り記載については任意となっているので、記載しなくても定款が無効になるということはありませんし、記載していないからと言って法的に効力が発生しないということでもありません。
さいごに
今回は最も難関といわれる定款の内容に触れてきましたが、いかがでしたか?
定款の提出方法や綴じ方などについては別に記載していきたいと思いますので、そちらもご確認頂ければと思います。
作成は難しいですが、できないことはありません。諦めず、あわてず確実に作成するようにしましょう。