会社の設立に欠かせないものと言えば「資本金」ですよね。
しかし、元手がなく、理想とする資本金額が出資できないということもあるかもしれません。
そこで資本金を多く見せるために、一時的に金融機関などから借入をし、出資しようという考えが頭をよぎったそこのあなた。
それは「見せ金」と言って、絶対にお勧めできない方法なので注意してください。
今回は、この「見せ金」について、そもそも「見せ金」とは何なのか?なぜやめるべきなのか?資本金が足りないときはどうすれば良いのか?など、詳しく解説していきたいと思います。
目次
そもそも「見せ金」とは?
「見せ金」とは、どういったもののことを指すのでしょうか?
正確に定義すると「発起人(会社の設立者)、取締役などが一時的に金融機関等から借入をし、実際に持っている資本金に加算したのち、会社の設立後に借入の返済を行うこと」です。
例えば資本金1,000万円で会社の設立を行ったけれども、そのうち500万円が会社の設立者による金融機関からの借入だった場合、500万円は「見せ金」ということになります。
「見せ金」は違法か?
結論から言えば、「見せ金」は違法です。
「見せ金」は、公文書の偽造に当たる可能性があります。
偽造と認められた場合、公正証書原本不実記載等罪という罪に問われる可能性があります。
罰則としては、5年以下の懲役、または50万円以下の罰金が科せられます。
また、会社法第52条の2でも見せ金に関する規定は述べられており、「払込みを仮装した場合 払込みを仮装した出資に係る金銭の全額の支払(第52条の2の一)」との規定が定められています。
「見せ金」のメリット
上述の通り「見せ金」は「違法行為」になります。
絶対にやるべき行為ではありませんが、大きな金額の資本金の必要性についてもお伝えしておきます。
主に大きな金額の資本金が必要となるのは、以下のような状況になります。
- 許認可取得の際、最低資本金額が設定されている業種である場合
- 会社の信用力を確保する必要がある場合
ひとつずつ確認していきましょう。
許認可取得の際、最低資本金額が設定されている業種である場合
会社法の改正によって資本金は1円からでも会社の設立をできるようになりました。
しかしながら、開業したい会社の業種によっては、事業を行う際に必要な許認可を取得する際、最低資本金の額が設定されている業種があります。
例えば、許認可取得の際に最低資本金額が定められている業種には以下のようなものがあります。
- 職業紹介事業 :500万円以上
- 建築業 :500万円以上
- 労働者派遣事業 :2,000万円以上
資本金は手元にないけれど、どうしても許認可取得の事業を行いたい場合は、見せ金も行うメリットになり得ると言えるでしょう。
会社の信用力を確保する必要がある場合
先述したとおり、会社の設立は資本金が1円からでも可能となっていますが、実際には資本金1円の会社は現実的ではありません。
資本金を設定する際に、数ヶ月分の予算を踏まえ、ある程度資本金で会社を回せる金額で設定する場合がほとんどであるため、資本金が少なすぎると倒産のリスクが高いと判断されてしまいます。
資本金は、対外的な会社の体力とみなされるため、あまりにも資本金の金額が少なすぎると金融機関から融資を受けることが難しくなったり、取引先企業からの信用が得られなかったりという事態が起こりえます。
「見せ金」のデメリット
では、「見せ金」のデメリットはどんなところになるのでしょうか?
違法行為である「見せ金」のデメリットについて確認していきたいと思います。
- 罰則が課せられ会社の信用がなくなる
- 金融期間から融資が受けられなくなる
- 課税対象となる
- 脱税行為となる
では、それぞれの項目について詳しく解説していきましょう。
罰則が課せられ会社の信用がなくなる
「見せ金」は、会社法の上では罰則規定はないものの、「公正証書原本不実記載等罪」という罪に問われる可能性があります。
公的な重要書類に嘘を記述することとなるためです。
この罪に問われれば、5年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられてしまいます。
懲役を科せられたとなれば、社員や株主、周囲の取引先などにもその事実は広まり、会社の信用が失われてしまいます。
金融期間から融資が受けられなくなる
金融機関から融資を受ける際には、資本金の額が重要となってきますが、金融機関は単に資本金の規模だけを見て融資をするかしないかの判断をしているわけではありません。
- 会社として健全な財務内容であるか
- 資金使途や申込額は適切であるか
- 明確な返済方法の提示はあるか
- 担保、保証人が存在するか
代表的なものが上記になりますが、この項目以外にも多くのチェックで審査がなされます。
見せ金を利用していると、個人が借入れた金額をそのまま資本金に加えているため、もともと借金がある会社であるという状況になります。
このような会社に金融機関が融資を行うはずがありません。
課税対象となる
「見せ金」で会社を設立した場合、会計上は「役員貸付金」として処理するのが一般的です。
見せ金で使用した金額を会社から出資者へ戻し、出資者個人が借入を行った金融機関へ返済を行うといった流れです。
この流れは「会社を設立した直後に会社から役員へ巨額の貸付を行っている」という状態にあたり、会社の信用が損なわれるだけでなく、役員貸付金が返済されずにそのままになっていると、その金額は会社から役員への報酬の支給とみなされます。
そうなれば、「見せ金に所得税が課せられる」という可能性が生じます。
脱税行為となる
「見せ金」を行うと、お金の出入りがどうしても不自然になってしまいます。
見せ金を払い戻す際、「役員貸付金」として会計上の処理を行うケースが多々あるのですが、「見せ金」と「役員貸付金」が同額になるのを防ぐため、見せ金の金額分のレシートや領収書を集めて経費として落とそうとする事業者が見受けられます。
この行為は「脱税行為」となりますので、絶対に行ってはいけません。
「脱税行為」は思いもよらないくらい重い処罰が科せられます。
「見せ金」はどうやってバレる?
「見せ金」を利用しているかどうか判断される基準としては、以下の項目が考えられます。
- 口座の履歴が不自然
- 個人名義での巨額な資金の振込み
ひとつずつ確認していきましょう。
口座の履歴が不自然
「見せ金」を行う際には、まずは個人的に金融機関から借入を行わなければなりません。
会社設立時には多額の資金を要しますので、個人口座から法人口座に上記資金が流入することになります。
履歴を見れば非常に不自然な金額の出入りになるので、調査が入ることとなり、金額の出入りを証明する書類の提出を求められます。
個人名義での巨額な資金の振込み
出処の不明な資金の振込みは、課税当局の目を引く要素となりえます。
例えばですが、正当なお金であってもタンス貯金などで家に貯めていた現金を個人名義で振り込んでしまうと、調査が入った際に発生源を証明することができないため、注意が必要です。
さいごに
今回は、便利なようで絶対にやってはいけない「見せ金」について解説してきましたが、いかがでしたか?
「見せ金」は違法行為であり、会社の信用を失うばかりか、最悪の場合、行政罰・刑事罰の対象となりえますので絶対に行ってはいけません。
会社を設立するための資本金はまじめにコツコツ積み立てていくか、国からも支援制度がありますので、そちらをうまく活用してくださいね。