「シェアオフィス」は、近年の働き方の多様化に伴い、個人事業主、法人問わず、会社の本店所在地を決める際、新しい選択肢として登場しました。
少し前までは、会社の本店所在地への登記といえば賃貸の事務所か自宅兼事務所にするというのが一般的でした。
しかし最近では、事業を始めるにあたり机や椅子、コピー機などの事務用品やインターネットやWi-fiなどの通信環境にかかる初期費用を抑えるため、「シェアオフィス」「レンタルオフィス」「コワーキングスペース」等の、もともと設備が整ったオフィスで事業を始めるといった形が取られることが多くなってきました。
そこで今回は、「シェアオフィス」の法人登記方法について、準備の流れからシェアオフィスで法人登記することによるメリットまで詳しく解説していきたいと思います。
目次
「シェアオフィス」の住所で法人登記ができるの?
「シェアオフィス」は、他人とオフィスを共有することになるわけですから、登記はできないのでは?
…と考えられている方もいらっしゃるかもしれませんが、シェアオフィスの住所での法人登記は可能です。
現在は個人として契約していたとしても、名義の切替えが可能ですので、法人を設立した際に変更することができます。
ただし注意する点があり、複数人が使用しているシェアオフィスでは、自社の他にも多数の会社が法人登記を行っていますので、社名が類似する会社が既に登記を行っていた場合には、来客の取違えや郵便物の誤配送を防ぐために登記を断られる場合もあります。
「シェアオフィス」で法人登記する方法
「シェアオフィス」で法人登記をする場合には、手続自体は通常の法人登記と同じです。
ただし、シェアオフィスのプランによっては法人登記が不可となっているものや、上述した通り、既に同じシェアオフィス内に類似する社名がある場合には登記できなくなってしまいますので注意してください。
シェアオフィスでは、おおまかには以下の流れに沿って法人登記を行います。
- 会社設立するにあたり確認しておくことがある
- 会社の印鑑を作る
- 定款を作成する
- 公証役場での認証を行う
- 資本金を準備する
- 必要書類、登録免許税などを用意し、法務局で登記申請する
各項目について、ひとつずつ詳しく確認していきたいと思います。
会社設立するにあたり確認しておくこと
「シェアオフィス」の運営会社の中には法人登記ができないところもあります。事前に法人登記が可能な会社であるかの確認が必要です。
会社の本店所在地としていったん住所を登記してしまうと、登記の変更手続が必要となってきます。
その際、変更手数料や定款の書換えなど、費用も手間もかかってしまいますので、シェアオフィスの経営についてはしっかりと確認しておきましょう。
万が一シェアオフィスの運営会社がシェアオフィス事業から撤退してしまい、住所が借りれなくなると突然の新居探しや登記の変更手続などで大変に手間がかかります。
また、書類を準備した後で登記が断られることにならないよう、類似社名についても確認しておきましょう。
会社の印鑑を作る
法人登記をする際には会社の「実印(代表者印)」が必要です。
会社の実印を印鑑登録し、会社の重要な契約書や書類へ押すことになります。
また、実印とは別に法人の口座で利用するための「銀行印」も作っておきましょう。
さらに、請求書や見積書など、普段の業務で日常的に使われる「社印」、住所などの記載の手間を省くため「ゴム印(住所印)」を作成することが一般的です。
定款を作成する
定款とは、いわゆる会社のルールブックにあたり、会社を運営するにあたっての目的や決まりごと、組織の基本的な構成などを定めたもののことを指します。
定款の内容は非常に複雑で、決まりに沿って作成する必要があり、記載するべき内容は大きく分けて以下の3種類になります。
- 絶対的記載事項
- 相対的記載事項
- 任意的記載事項
定款の詳しい作成方法については、本サイトの別記事でも解説していますので、合わせてご確認ください。
公証役場での認証を行う
定款が無事完成したら公証役場で公証の認定を受けます。
公証役場で公証人が内容を確認することにより、定款が認証され、社会的にも有効となります。
認定の際には、以下に記載している書類や現金を準備していきましょう。
- 定款 3通(公証役場保管用、会社保管用、設立登記申請時の法務局提出用)
- 発起人(資本金の出資者)全員の印鑑証明書
- 発起人(資本金の出資者)の実印
- 本人確認証明書
- 定款の謄本作成費 250円/枚
- 認証にかかる手数料 5万円
- 収入印紙代 4万円(電子定款の場合不要)
ちなみに「合同会社」の場合、この定款の認証は不要となっていますのでこの作業は必要ありません。
資本金を準備する
定款が公証役場で認証された後は、資本金の振込みを速やかに行う必要があります。
そのため、資本金は事前に余裕をもって準備しておきましょう。
以前は資本金の額の下限が決まっていましたが、会社法の改正により資本金は1円からでも会社の設立が可能となりました。
しかし実際には資本金が1円の場合、弊害が多く現実的ではありません。
多くの取引先や金融機関などは、会社の資本金を見てその会社が信用できるかどうかを判断しています。
また、設備投資費や商品購入費なども、基本的には資本金から支払うことになりますので、事業を継続させるために必要な金額をある程度準備しておきましょう。
必要書類、登録免許税などを用意し、法務局で登記申請する
定款が認証されると、法務局で法人登記を行うことになります。
設立する会社の形態により、準備しなければならない書類の内容は少し異なりますが、必要となる書類、登録免許税は以下の通りです。
- 設立登記申請書
- 印鑑届書
- 定款
- 発起人の決定書
- 就任承諾書
- 選定書
- 設立時代表取締役の就任承諾書
- 代表社員の印鑑証明書
- 本人確認証明書
- 出資金の払込証明書
- 資本金計上に関する証明書
- 法人設立届出書
登録免許税は基本的には「資本金×0.7%」となっており、最低額は15万円と決まっています。
例えば資本金が100万円の場合、資本金の0.7%は7千円ですが、15万円を支払わなければなりません。
法人登記についての流れをおおまかに解説しましたが、実際には定款の作成、資本金の準備、必要書類の準備はすべて同時平行で準備を行う場合が多いです。
さいごに
今回は「シェアオフィス」の住所を使って法人登記を行う方法を解説してきましたが、いかがでしたか?
シェアオフィスを借りることにより、自分ひとりの資金では到底借りられないような好立地な場所や、高機能なビル内のオフィスを借りることも可能ですので、ビジネスの幅が広がります。
ご紹介した内容を参考にうまく活用してみてください。
みなさんの事業がうまくいくことを心より願っています。