会社を設立する際、必ず必要なものと言えば「定款」です。
しかし、この定款、必要なものの中で準備するのが最も困難であると言っても過言ではありません。
そこで今回は、最難関とも言える「定款」の作成方法について、わかりやすく解説していきたいと思います。
目次
そもそも定款ってなに?
「定款」とは、わかりやすく言えば会社の憲法・ルールブックのことです。
会社を設立する際には必ず作成しなければならず、必ず記載しなければならない事項が記載されていない場合は無効となります。
作成にあたり、株式会社と合同会社では以下のような違いがあります。
株式会社
発起人全員で作成する。
発起人の署名・押印後、公証人に認証してもらってから初めて効力が生じます。
合同会社
社員全員で作成する。
公証人による認証は必要ない。
定款は、紙の他にPDFで作成する「電子定款」もあります。
定款の記載事項について
「定款」は会社の発起人によって作成しますが、全ての事項を自由に決められるというわけではありません。
「会社法」という法律によって基準が設けられており、この基準に沿っていなければ定款の効力は生じません。
会社法には、「定款」に記載しなければならない内容が定められています。
「定款」に記載しなければならない事項は以下の3つです。
- 絶対的記載事項
- 相対的記載事項
- 任意的記載事項
それでは、それぞれの記載事項についてひとつずつ見ていきましょう。
絶対的記載事項
「絶対的記載事項」とは、定款に必ず記載されていなければならない事項のことを指します。
これが無ければ定款は無効となり、容赦なく作り直しとなります。
そのことは上記の会社法により定められています。
記載しなければならない内容は以下の6つの項目になります。
事業目的
その会社における「事業目的」を定める必要があります。
会社を設立して、具体的にその会社で何の事業を行うのか、何を目的とした会社であるのかを誰が見てもわかるように記載します。
商号
「商号」=会社名を記載します。
基本的には好きなように名前をつけることが出来ますが、いくつかのルールがあります。
具体的には以下のようなものがあります。
・必ず「株式会社(合同会社)」と入れる
・同じ住所で同じ商号がある場合はつけられない
・公序良俗に反する商号はつけられない
・使用できない文字もある
・有名な大企業と同じ商号はつけられない
本社所在地
会社がある場所の住所として「本社所在地」を記載します。
事業実態がない場所、賃貸の契約で商業利用が禁止されている住所を記載しては
いけません。
発起人の住所氏名
発起人全員の住所と氏名を記載しておく必要があります。
資本金額
「資本金額(出資財産額)」は、会社を設立する際に発起人が各自出資した資金の総額を記載するものです。
「資本金」の決め方については、決まりはありません。
最低額は1円からでも会社を設立することが可能です。
ですが「資本金」は会社の規模、いわば信用力を表すものとなります。
あまりに低い額だと信用が得られず、取引先として認められなかったり融資が受けられなかったりします。
逆にあまり高い額にしても節税面で優遇を受けられないなど、デメリットがあるので注意が必要です。
例えば新規開設会社の場合は消費税免税の優遇措置がありますが、資本金額が1,000万円を超えると、その優遇措置が受けられなくなります。
発行可能株式総数
会社が発行できる株式の総数を定める条項です。会社が発行可能株式数を超えて株式を発行するためには、定款変更が必要となります。
相対的記載事項
「相対的記載事項」とは、「絶対的記載事項」と違って定款に必ずしも記載しなければならない内容ではありませんが、定款に記載されていない限りはその事項の効力が生じないものです。
つまりは決定したものは記載しておかなければなりません。
会社の方針を決める上では必要なものだといえます。
記載する内容は以下のような項目になります。
- 現物出資
- 財産引受
- 発起人の報酬
- 設立費用
- 株式の譲渡制限に関する規定
- 取締役会、監査役(監査役会)、会計参与、会計監査人などの機関設計
- 株式譲渡承認機関の別段の定め
- 取締役および監査役の任期伸長
- 譲渡制限株式についての売渡請求の旨
- etc…
任意的記載事項
「任意的記載事項」とは、「相対的記載事項」と同じく、必ずしも記載しなければならない内容ではありません。
定款に記載しなければならないということはありませんが、定款に記載しておくことで規則としての拘束力が発揮できますので、記載しておくことをお勧めします。
記載する内容は以下のような項目になります。
- 株主総会に関すること
- 取締役の人数の規定
- 事業年度に関する定め
- 株券の不発行に関する定め
- etc…
定款には2種類ある
会社の定款には「原始定款」と「現行定款」と言う、2種類の定款が存在します。
それぞれに、以下のような特徴があります。
原始定款
会社の設立時に作成する最初の「定款」のことです。
公証人の認証を受けた後に効力が生じ、その後公証役場にて保管されます。
現行定款
現時点で効力のある「定款」のことです。
事業を運営していく中で、定款の内容に変更が生じることがあります。
内容を変更すると、古いものは「原始定款」となり、新しいものが「現行定款」となるわけです。
定款を変更する場合、株主総会による特別決議と再度公証人による認証が必要となります。
定款の認証について
定款を作成したあとは、定款に正当性があるかどうか公証人に証明してもらわなければなりません。
これを定款の認証と言います。
定款とは会社のルールブックになるもので、きわめて重要なものです。
公証人に認証してもらい「会社設立に際し、発起人全員の同意のもとで作成された原始定款である」ということを証明しておくことにより、改ざんや紛失などのリスクを抑えることとなります。
認証の際には、1件に対して5万円の費用がかかり、定款を変更する際にも費用がかかります。
変更の際の手数料は、変更内容や公証役場により異なりますので、事前に確認しておきましょう。
株式会社、一般社団法人、一般財団法人などは定款の認証が必要なのに対し、最近数を増やしてきた合同会社、合名会社、合資会社などについては定款の認証は必要がなくなっています。
さいごに
「定款」について、記載すべき項目やその内容について解説してきましたが、最後にもう一度簡単にまとめておきましょう。
定款に記載するべき事項
- 絶対的記載事項
- 相対的記載事項
- 任意的記載事項
定款の種類
- 原始定款
- 現行定款
ここまで「定款」について解説してきましたが、いかがでしたか?
会社を設立する上で、最も時間と根性を要するのが定款作成という作業です。
時間もお金も要しますが、会社の規範となる大切なものですので、めげずに納得のいくものを作りたいですよね。