サラリーマンから独立して起業したい!そう思ったとき、まず迷うのは「個人事業主」として活動するのか、「会社」を設立するのかという点ではないでしょうか。
活動スタイルや今後の展開などによって最も適したものを選びたいところですが、メリットとデメリットを知っておかなければ、それも難しいですよね。
そこで今回は、「個人事業主」で起業する場合においてのメリットやデメリットについて、わかりやすく解説していきたいと思います。
目次
「個人事業主」とは?
比較的自由で何ものにも縛られないイメージのある「個人事業主」。
企業や団体などとの雇用関係がない、個人で事業を営んでいる人のことを指し、「自営業者」とも呼ばれます。
必ずしも1人で事業を行うわけではなく、従業員を雇うことも可能です。
「屋号」と呼ばれる名前をつけて事業を営むことはできますが、「株式会社」「合同会社」などの名前をつけることはできません。
「個人事業主」のメリットとデメリット
「個人事業主」として起業するにしても、「会社」を設立するとしても、それぞれにメリットとデメリットが存在します。
自身が営む業種や事業の大きさによっても多少変わってきますので、しっかりと理解して起業の形態を選びましょう。
今回は、「個人事業主」で起業する際のメリットとデメリットについて、1つずつ詳しく見ていきたいと思います。
まずはメリットから
「個人事業主」のメリットには、以下のようなものがあります。
- 開業の手続が簡単
- 税務関係の申告が簡単
- 経理処理などの事務処理が簡単
- 利益が少ないうちは税金の負担も小さい
それでは、それぞれ詳しく解説していきましょう。
【開業の手続が簡単】
「個人事業主」の一番のメリットといえば、面倒な開業手続がなく、費用もかからないことといえるでしょう。
会社を設立するには、資本金を用意したり、定款の作成や登記書類の作成といった煩雑な作業が多く、会社を発足させるまでに早くても2週間、平均では1ヶ月ほどの時間がかかります。
その点、「個人事業主」は税務署に開業届を提出するだけで作業は完了しますし、費用もかかりません。
【税務関係の申告が簡単】
「個人事業主」の場合、毎年決まった時期に確定申告を行う必要があります。
事業の規模にもよりますが、一般的には白色申告ではなく青色申告で確定申告を行います。
ただ、白色よりも手間のかかる青色であっても、経理ソフトを使用すれば自分で簡単に申告することが可能です。
現在では、簿記に関する知識がなくとも、自分で簡単に確定申告ができるような使い勝手の良い確定申告用のソフトがたくさん発売されています。
中には「個人事業主」であっても税理士に依頼する人もいますが、一般的に法人税の申告に比べると、依頼する費用は安く済むことが多いです。
【経理処理などの事務処理が簡単】
「個人事業主」は、一般的に「国民健康保険」と「国民年金」に加入します。
特別な手続はあまりありませんので、事務の負担は少なくなります。
会社を設立すると、たとえ1人社長だったとしても社会保険への加入が必須となり、社会保険への加入に複雑な手続が必要となってきます。
その上、会社から給料を支払うことになりますので、給与計算を行い、所得税や社会保険などを源泉徴収した上で、税務署・年金事務所に納付しなければなりません。
【利益が少ないうちは税金の負担も小さい】
税金において「個人事業主」は所得税、「法人」は法人税を支払うことになりますが、利益が少ないうちは所得税の方が法人税よりも支払う税金は少なくなります。
起業直後は、事業がいつ軌道に乗るのかがわからないため、事業が安定するのを見定めた後に「個人事業主」から会社設立へと進むのが無難で、一般的に多く見受けられるケースです。
利益がいくらまでであれば税金の額が少なくなるかは、業種等により違ってきます。
ではデメリットは?
メリットを理解したところで、次はデメリットについて見ていきましょう。
「個人事業主」のデメリットには、以下のようなものがあります。
- 社会的信用が低い
- 資金調達が難しい
- 利益が多いと税金面での負担が大きい
- 人を採用するときに不利になる
- 個人事業主は無限責任
それでは、それぞれ詳しく解説していきましょう。
【社会的信用が低い】
「個人事業主」は開業届さえ出せばその日から開業できますので、法人のような登記は必要ありません。
法人のように厳格な売上金の管理もなく簡単に運営ができるため、社会的な信用があまり高くありません。
特に大手企業の中には、実績があっても「個人事業主」とは取引をしないところもあります。
【資金調達が難しい】
「個人事業主」、とりわけ白色申告者の場合は、確定申告の際に貸借対照表の添付が免除されており、金融機関から融資審査を受ける際に条件が厳しくなります。
そのため「個人事業主」が金融機関から融資を受ける場合は、保証人や担保の提供を求められるケースも少なくありません。
金融機関から評価を得るためには、事業用の口座と生活費の口座をしっかり分けて管理することが大切になってきます。
【利益が多いと税金面での負担が大きい】
会社設立のメリットの箇所でも少し触れましたが、「個人事業主」では、利益(所得)が増えれば、その分だけ税率が高くなる「累進税率」が採用されています。
そのため、利益が多く上がるようになった「個人事業主」の多くが法人化します。
【人を採用するときに不利になる】
事業が軌道に乗ってきたので人を雇いたいと思ったときに、「個人事業主」は法人よりも不利といえるでしょう。
法人であれば厚生年金や健康保険への加入が義務付けられているのに対し、個人事業では一定の従業員数に達するまで加入義務が生じません。
その上、事業所の名称に「○○会社」とついている法人に比べ、組織が小さく、事業も安定していないイメージがあるため、人が集まりにくいのが現状です。
【個人事業主は無限責任】
「個人事業主」は無限責任といって、万が一事業に失敗し、負債を抱えた場合に全額弁済しなければならない義務が生じます。
個人資産をつぎ込んででも負債を弁済する必要があるため、負債を抱えてしまった際の責任の重みは法人以上になるでしょう。
まとめ
では、最後に「個人事業主」で起業する場合のメリットとデメリットを簡単におさらいしておきましょう。
個人事業主で起業することのメリット
- 開業の手続が簡単
- 税務関係の申告が簡単
- 経理処理などの事務処理が簡単
- 利益が少ないうちは税金の負担も小さい
個人事業主で起業することのデメリット
- 社会的信用が低い
- 資金調達が難しい
- 利益が多いと税金面での負担が大きい
- 人を採用するときに不利になる
- 個人事業主は無限責任
以上の観点から、あまり人手を必要とせず、事業規模も小さく、今すぐに1人で事業を始めたいのであれば「個人事業主」にしておいて、規模が大きくなってきたら「会社を設立」するというのが良さそうですね。
さいごに
ここまで「個人事業主」についてメリットデメリットを解説してきましたが、いかがでしたか?
自分で起業し、夢を叶えるということは素晴らしいことです。
どのような形態で起業するとしても苦労はつきものですが、自分の選択を後悔しないよう、しっかり考えて決めたいものですね。